2008年06月04日

アフター5に勉強?

●『沖縄タイムス』教育16面/1998年12月15日(火曜日・朝刊)

アフター5に勉強?
・・・学校での学習時間大切に・・・


 大阪で学習塾に十二年間勤めた後、一九九六年一月から、縁あって沖縄の学習塾でお世話になることになった。
 沖縄に来た当初、新聞に折り込まれる塾のチラシを見て首をかしげたものだ。一般の県立高校入試を目標にした学校内容べったりの学習塾が、週に五日も六日も生徒を通塾させる。大阪では週五日コースと言えば「超難関私立中・高」の受験生を対象とする、いわゆる「受験塾」だけである。「沖縄の中学生はどうしてこんなに勉強しなくてはならないのか?」とずっと疑問だったが、最近その「なぞ」が解けた。
 彼らは学校の授業をほとんど聞いていないのである。
 私が「学校の授業を聞いていないのに、よく期末テストで百点取れるね」と言うとある生徒は「だって、テストの前の日に学校でもらったプリントを丸暗記したら、そのまま出るもん」と言う。だから授業を聞かなくてもいいんだと言う。さらに彼はこう付け加える。「学校の先生は、僕らのことを信用してくれていないから」。これが、トップランクの百点満点を取る生徒のせりふなのである。しかし、これでは高校入試を突破する力が付くはずないと気付き、結局は塾に通うことになるわけだ。
 本来、学習塾の役割は「学校内容を超えたハイレベル内容、先取り単元を指導することにより、超難関校への合格力を養う受験塾タイプ」と「学校内容についていけない学習不振児対象の補習塾」の二種類であった。しかし、沖縄では「学校の授業を聞いていない生徒のための学校準拠塾」が確実に数多く存在している。
 この四月から那覇市内にある個別指導の教室を受け持つことになり、席次一番の優秀生から「自分の後には五人しかいない」という成績不振児まで、実に多種多様の生徒さんと出会った。
 個別指導なので、授業中に生徒のカウンセリングを盛り込むことができ、ある程度の実態調査ができた。驚くべきことだが、席次上位者の中にも「学校の授業についていけない生徒」や「学校の授業を全く聞いていない生徒」が存在する。
 問題は後者の方である。生徒が「今学校で習っている」という単元を「どのくらい理解しているか」を確認しようとすると、ほとんど頭に入っていないことが多く、一から講義し直さなくてはならない。「一体学校でどんな授業を受けているのか」と聞くと、答えは本当に千差万別だ。部活生は「授業中は眠っている」。ある中二の女の子は隣の席の子としゃべってばかりなので、「いつも先生にしかられている」。前述の満点君は「先生が嫌いだから授業はさぼる。出席しても無視しておしゃべりしている」。そして、意外に多いのが「しゃべっている生徒がたくさんいても、先生は全然注意せず、黒板の前でぼそぼそ解説するだけだから、よく分からない」
 週五日の塾がはやるわけである。そして、沖縄の子どもたちの多くが本当に勉強しているのはアフター5(ファイブ)の塾での時間だけかもしれないと考えさせられる。
 子どもは机の上の勉強と、子ども同士の遊びから学ぶかけがえのない勉強との両輪で初めてバランスのとれた人格を形成するものだと思う。
 週四十時間という学校での膨大な学習時間をもっとノーマルな状態にしなければ、永久に子どもたちは「心置きなく」遊ぶことなどできない。

※毎回、エッセーが掲載される前日の夜はあまり熟睡できませんでした。
 明日の朝、出勤したら、「あんたは、一体何を根拠にこんなエッセーを書くのか」といったクレームが殺到しているのではないかとどぎまぎしていたのです。実際、この『アフターファイブに勉強?』のときは、本当に清水から飛び下りる気持ちで脱稿しました。みんながみんな学校の授業をおろそかにしているわけではないし、また、地域によっては学校運営がかなりうまくいっているところもあると聞いているからです。しかし、エッセーに盛り込んだお話も全て事実で、私が勤めている塾(トリプル・アイグループ)の教室で見聞きしたことばかりです。
 結果、学校関係者の反応もよく、沖縄市内のある中学校では、このときの記事をそのまま印刷して全生徒に配付してくれたところもありました。やれやれ。


ほかの『教育えっせー』をご覧になる場合はこちら↓
■優劣つけがたいはずなのに(1998年5月19日)
■「不便」という名の最高のプレゼント(1998年7月7日)
■豊かな時代に生きる子どもたち(1998年9月1日)
■親の役割、先生の役割(1998年10月12日)
■アフター5に勉強?(1998年12月15日)
■一斉授業と個別指導(1999年3月2日)
■立ちはだかる「モラルの壁」(1999年4月20日)

チャンプ進学塾のブログにもどる方はこちらをクリックしてください。↓↓↓↓↓↓
アフター5に勉強?









同じカテゴリー(教育)の記事
神韻
神韻(2015-04-07 12:02)

謹賀新年
謹賀新年(2010-01-01 03:45)


Posted by チャンプ進学塾 at 11:49│Comments(1)教育
この記事へのコメント
塾選び
Posted by まらったん at 2008年11月07日 12:03
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。