神韻
父は奈良県生駒市の商店街で
小さな文具商を営んでいた。
商店街の定休日は8のつく日で
月に3日しか休めなかった。
だから、京都の国立美術館で
大きな美術展が開催されると、
平日でも学校を休ませて
娘たちを京都に連れ出した。
「君たちが今日一日学校を休んでも
人生はあんまり変わらない。
しかし、これから観に行く芸術作品は
君たちの人生を変えるかもしれない」と言って。
大阪の下町生まれの父だったが、
大事な話をするときは
なぜかいつも標準語になった。
生きているうちに
必ず鑑賞したい芸術。
敢えて「芸術」と言いたい。
私にもし娘がいたなら
きっと観に行かせるだろう。
神韻。
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